一握りの土にも 花は咲く
家から続く道路、自分も歩き近隣の人も歩く
だから ごみが散らかっていると気になる
その人は ほうきとちりとりでいつも掃除をする
「さっぱりして気持ちがいい」
ほうきで掃いていると 土が少しずつ溜まってくる
その土を塀のそばまで寄せ集めると 一握りのかたまりになる
そんなかたまりが あちこちにできあがった
「そうだ 花の苗を植えてみよう!」
ポケットマネーを持って 花屋で小さな花の苗をいくつか買った
季節の花の苗 赤 白 花はちいさいが丈夫そうだ
花を植え水をやり 掃除で出るわずかな土を毎日運んだ
季節は変わっていったが 花は根付き 絶えることがなかった
気がつくと 塀に沿って点々と花が続く
「きれいですね ここはまるで 花街道のよう!」
道を通る人が足を止めて花を愛で 労をねぎらった
自分の楽しみで始めたことが 誰かの慰めになっていることを知った
「少しの土でも花が咲いてくれるので 嬉しいんです」
花街道の作り主は 満面の笑みを浮かべ 花談義が始まった
小さな花のお蔭で 初めての人とでも会話が続く
小さな花は ほんの少しの土と 思いを寄せる人の手で育まれる
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